令和4年10月30日(日) 14:00~16:00に、【第7回 吃音のつどい】・オンライン第3弾を開催しました。
今回は、7家族が参加してくださいました。そして、前回に引き続き、高山の久美愛厚生病院の言語聴覚士 田宮久史先生が参加してくださったのに加え、蘇原第一小学校言語通級を担当されている、横枕(よこまくら)先生にもご参加頂き、通級での吃音児の集団活動を紹介していただくなど、より充実した内容となりました。
☆Zoomでゲーム☆
まず、自己紹介。好きなことや好きな物を言いながら、自己紹介しました。
好きなことの話の時は、みんなウキウキするね。栗拾いにはまっているなんて人もいましたね⁈
①コレなんだ?クイズ
横枕先生が用意してくださった、蘇原第一小学校の通級指導教室で実際に使われた「物当てクイズ」をしました。
形の一部からだんだんたくさん見えていく間に当てるというものです。しかも、答えがしりとりになっているという手の込みよう。みんな勘がよく、すぐに当ててくれました。
②お絵描きしりとり
ミュートにして音声を消したまま、絵だけでしりとりをしました。
りんご⇒ごはん⁈(きのこ)⇒こま(うでどけい)⇒いちご⇒ごりら(さる)⇒るびい(へた)・・・
※( )は、次の子が書き手と違うものにとらえた名称です。みんな画伯だぁ!
◆交流会
★自己紹介と近況
・小4 小学校に上がってからも吃音はずっとあるが、困り感はなくなり、馴染んでいる。目立たなくなってきていると感じる。
・小3 吃音の事をクラスの子たちもよく理解してくれているので、本人の不安感なく安心して過ごせている。
・小1 就学後のことを心配していたが、落ち着いて陽気に暮らしている。月1回吃音のグループ活動(言語通級)に参加させてもらっている。
・小1 支援級8人のクラスに通っている。クラスのみんながよく理解してくれていて、楽しく通っている。
・小1 吃音の事をクラスの子どもたちにまだ話してもらってはいないが、本人は落ち着いていて、吃音の事を気にせず毎日過ごしている。ただ、音読計算カードは時間を計るので、つかえたりしてうまくできないことへのジレンマがある。
・年長 就学後、指摘されたりして本人が嫌な思いをしないか心配。
・年中 本人から、「友達にまねされる」との訴えがあり、担任にお願いしてクラスで話をしてもらった。その後は指摘などもなくなり、安心して過ごしている。
・年中 最近どんぐりの相談に行き始めた。吃音が出てうまく話せなくて怒ったりしていたが、最近は、家では吃音が出ても、いっぱい話せるようになってきた。
❤田宮先生からのコメント
・「吃音に馴染んでいる」という一言、この感覚がとても大事、嬉しい!
★1年生の国語に早口ことばが出てくるが、どうしてもできないと本人が悩んでいる。
小3 早口ことばだと吃音にならなかったと本人は言っている。(リズムに乗れると滑らかに出るのかも?)
小1 早口ことばではなく、音読で吃音が出やすいが、早く読むことが目的ではないので、つまっても正しく読めればいいよと話している。
❤田宮先生コメント
・基本的な事として、吃音は出てはいけないものでしょうか?吃音の出初めの頃は、吃音(連発)が出ても楽にたくさん話せていたと思う。その感覚がずっと続けば吃音は悪化しない。ところが、吃音は出てはいけないもの、と思ってしまうと、伸発になり、難発になり重症化していく。学校や園で、クラスの子どもたちに吃音の事を話してもらったという人がいたが、家庭と同じように、園や学校のみんなが自分のことをわかってくれて、吃音が出ても安心して話せる場所になると、子どもたちはとても心が楽になり、おそらく、連発だけで過ごせるようになる。しかし、園や学校のみんなが、吃音のことをわかってくれていなくて、隠さなければならないような場所になると、すごく努力して話そうとするので、難発になってくる。なので、そういう場所にしないこと。
・音読・計算カードや早口ことばは、早く言う事が求められるが、吃音のせいで時間がかかってしまうことに対しては、早く言えたという事よりも、まず、挑戦したということ、最後まで努力したということを褒めてあげることが大切。できれば、担任には、本人がいる場所でクラスのみんなに、早く言うことが目的ではなく、チャレンジすることが大事な事であるという事を伝えてもらえるとよい。担任と相談し、本人なりの努力を認めてもらえるようにしていただく。子どもに対しては、挑戦したことを、しっかり褒めてあげましょう!吃音が出ている自分のことを肯定してくれる人がいて、それを伝えることがとても大事。
★小4 吃音がひどく、苛立っているのは相変わらず。今年度から、担任の勧めもあり、通級のグループ学習に参加している。最初は、通級が恥ずかしいのか嫌がっていたところもあったが、今では抵抗がなくなり、グループの他の子と自分の吃音を比べて(客観的に)話をしたりするようになった。一人じゃないと思っているのかと思う。学級委員として、失敗?を繰り返しつつも彼らしく頑張っている。サッカーの県大会出場が決まり燃えている。
❤田宮先生コメント
・苛立ちの原因は何だろう?難発が多い子は、サッサと言えないことがもどかしいという苛立ちがある。それだけなら努力していることを認めてあげればよいが、みんなの前で吃音が出ることが恥ずかしくていやだから苛立つのであれば、対応をちゃんと考えなければいけない。苛立つ理由をきちんと話し合って、子どもの気持ちを聞いてあげて下さい。
★高学年になり、あまり自分のことを話してくれなくなった時、親から吃音の事を聞くのはストレスになるのか?それとも話せる時間があった方が楽なのか?
❤田宮先生コメント
・吃音のことに触れない方がいいという事はない。年齢が上がってくると、吃音の事はデリケートになってくるので、話すのを嫌がる子はいる。しかし、いつだって吃音の事を話せる場所がある安心感は作ってあげてほしい。
・吃音のことを話す時に気を付けてほしいこととしては、大人が、「どう、最近大丈夫?」と言う聞き方をしてしまうこと。こう聞かれると、子どもは、「だいじょうぶ。」と答え、親は安心しがち。しかし、その「大丈夫」は本当の意味なのかというのは、年齢が上がってくるほどわからなくなるので、どうして大丈夫なのかを深く聞いていくことが必要。「大丈夫」と答えていても、実は、学校では答えが分かっていても吃音が出るのが嫌だから手を挙げないようにしていたり、音読も当たらないようにトイレに行ったりしてかわしているなどという状況だとしたら、大丈夫とは言えない。吃音の事をみんなに分かってもらっているし、自分でもみんなに、詰まりながら話せるほうが楽なんだということをちゃんと友達に伝えられるから大丈夫というのであれば、本当に大丈夫といえる。子どもに丁寧に聞いてあげる時間をもつことが大切。
・子どもたちは、吃音を真似されたり指摘されたかを聞くと、「わからん」とか「知らん」とか「忘れた」とか、話題をそらしたりすることがあるが、親は、その時の気持ちをしっかり受け止めて、「みんなに吃音の事をわかってもらうように、ちゃんと話すからね。任せてね。」と伝えてほしい。そして、園の先生とも連携してクラスの子どもたちに、きちんと伝えてもらうようにしていくと、本人は安心する。
・吃音は、たくさん出ている方が、その子にとっては楽な気持で話せているので、出ていることを悪い事だと捉えないでほしい。
◇安田コメント
・少し前に読んだ、吃音当事者の本に、大人になって、吃音が出ないように「言い換え」という工夫をしてきた人が、言い換えている自分に罪悪感をもつ様になり(吃音を隠していることに)、あえて、吃音が出る素の自分に戻して楽になったという事が書かれていたことを思い出した。(「どもる体」伊藤亜紗著 医学書院P210)
★蘇原第一小学校での「吃音のグループ通級」の活動の紹介(横枕先生)
・グループ通級を行っているのは、市内で蘇原第一小学校だけ。対象者は全市内の児童だが、今年度はコロナ禍で、蘇原中校区の児童に限定している。現在は6名。
・大切にしていること:吃音を直すのではなく、安心して話せる場をもつこと、担任とつなぐこと、吃音を持つ仲間と出会えること。周りへの理解のために、家庭-担任-通級を繋ぐ、交流ファイルでやりとりしている。
・クラス担任に吃音の事を理解してもらうために、年度初めにパンフレットを渡すなどして、本人が安心して話せる学級にしてもらうようお伝えしている。
・グループ活動(月1回):みんなでゲームと必ず、「きつおんすごろく」をやっている。すごろくは、カードにかかれている事に答えたりしながら進めていくものだが、例えば「吃音が出やすいのはいつ?」に対し、全員が「朝」と答えて盛り上がったりした。学年が上がってくると、友達と吃音の話をしたいという気持ちが出てくるようだ。グループでは、安心して話せるし、仲間から学べ、一人じゃないと思える。
・個別指導では、たくさん話すことを大切にしながら、運動やクイズなどを行っている。通級に来ている子は、みんな優しくて誠実で、周りから好かれている子が多いので、担任とよく話し合っていけば安心して学校生活が送れる。
・大切なのは、自信を無くして話さなくなる二次障がいを防ぐこと。吃音の人も、吃音が出ない人も、つまってもいいと、世界中の人が思うことが大切!
★那加第三小学校の言語通級に通っている中でのちょっといいエピソードより
(小規模だが、月1回グループ活動があり、その時、保護者で話し合う機会で出た話し)
・通級に通うまでは、吃音が出ると悲壮感があったが、通級を利用することで吃音の話ができるようになり話し方が和らぐようになった。
・それまで、吃音の事を相談しても「気のせい」とか「全然出ていないよ」と言われ、あしらわれ続けていたが、通級に通うようになり、依然として難発はあるものの、お子さんが楽しそうにしているので安心した。
これらを聞いて、周りの支えがいかに大切なのかを改めて実感した。
★言語通級ってどうやったら通えるの?
・教育委員会で必要と判断されると通うことができる。但し、全ての学校にあるわけではないので、ない場合は近くの学校に通うことになる。(就学後、担任と相談してください)
・吃音のあるすべての子が通っているわけではないし、必要に応じて利用すればよい。ただ、親も子も相談できる場はあった方がよいと思う。特に、中学年(3・4年生)ぐらいになった時に、吃音のある友達と話せたり共有する場があると子どもにとっては安心できると思う。
★運動会の時、全校の前で挨拶をしたのに、クラスの日直当番は友だちと一緒にやりたいと言う。これって、どういう心理状態?(小3)
・親としたら、逆だろうと思うが、どうしてなのかわからない。本人に聞いてもよくわからないと答える。
・運動会の挨拶は自ら希望し、よく練習して、上手に言えた。本人は、普段吃音があることを気にしておらず、このままでいいやという感じ。
◇安田コメント
・3年生になり、少し挑戦してみようという気持ちになったのではないか。結果がどうであれ、チャレンジしてみようという気持ちを持ったことがすばらしい!褒めてあげたい。
❤田宮先生コメント
・よく知っている友達の前の方が緊張度が増すということはあるのかも。知らない人が沢山いる中全校の前では、適度な緊張感で吃音がでなかったのではないか。一般的に、吃音が最も出やすいのは、話したい気持ちがものすごく高まっている時と、出たらどうしようという不安感が強い時。親の前など、安心して話せる場面では吃音が沢山でやすい。この吃音は楽に出ていて心理的な問題もない。一方、吃音が出たらどうしようという不安感が強い時にも吃音が出やすいが、この時は吃音の事を否定的に捉えてしまいがち。吃音が出にくいのは、適度な緊張感がある時と独り言(第三者に向けての気持ちがない時)。
★1年生になって思う事
・年中や年長の保護者の方の不安は、本当によくわかる!だけど、小学生になると、上の学年の子ども達との関わりが増えるが、吃音のことをきちんと子どもたちに伝えれば(知らないだけなので)、認めてくれる友達もいっぱいできて、親としては、もう少し大らかな気持になれる。小学生になると、子どもたちの理解力が高まるので、自分の吃音の事を友達に説明すれば、素直に受け入れてくれる子どもが多いと思う。子ども同士の方がわかり合えるように思う。そして、お互いの視野が広がり、いい方向へいくように感じる。日々、心配は尽きないが、年齢が上がるにつれ、自分で理解し不安を取り除く方法を見つけたりして、落ち着いてくるのではないかと思っている。
・年中、年長は不安で、治らないかなあと思って過ごしていたが、吃音は悪い事ではないと思えるようになってから、子どもの個性だと捉えられるようになった。年齢が上がってくると、吃音があっても、そんなに気にしなくなるのではないかと思えるようになった。「吃音のつどい」に参加して、先輩の方の話を聞くと気持ちが楽になり、心配に思う事が減ってきた。
・幼稚園の時はすごく心配していたが、学校に入ってから、周りの子どもたちから何も言われたりすることなく過ごしているが、放課後等デイサービスの先生に、「吃音はどうしたら治りますか?」と聞かれたとことがある。
【感想】
◆スタッフ齋藤
小学生になると、親より、先生や友達・仲間に認められたいという気持ちがどんどん強くなってくるので、そういう場を保障してあげられることが必要になるので、その都度、相談に乗れる関係を作っていきたいですね。
❤田宮先生
・1年生の保護者の方たちが、今安心して過ごせているという時期を過ごせているという事がすごく嬉しい。今後、学年が上がるにつれて相談できる場や相手が変わってくるが、相談できる相手がいる事がすごく大事。中高生や成人の吃音の相談を受けているが、相談に来るまで、吃音の対応をされてこなかったので、すごく苦しい状況になっている。それまで、吃音を隠そうとして生きてきて苦しんできた人に、周りに話してみたらと提案したところ、びっくりされたが、話してみたら意外に理解が得られ、その後、吃音はあっても楽に話せるようになったと言う事例がある。成人になると、ほぼ100%難発の症状になるが、その人は、その程度が軽くなり、頻度も減ってきた。何より、吃音が出ても恥ずかしいと思わなくなってきたとのこと。そういう事例を顧みて、皆さんがこれまでされてきた対応をこれからも続けることで、間違いのない人生が歩めると思う。今後もこうして交流できる場が続くといいなと思います。
◆参加者のアンケートより
★保護者
・年長の頃に比べると、かなり不安がなくなりました。今回も皆さんのお話を聞けてとても勉強になりました。1番大切なことは、本人が気を遣わずお話ができる環境を作ることだと教えていただけたので、今後も担任の先生などと連携をとって様子を見ていこうと思いました。
・親御さんのお話や学校での取り組みを詳しく聞けて安心しました。今後も子どもと楽しく話して吃音と向き合っていこうと改めて思えました。そしてまわりにも理解者を増やすべく話していけたらと思いました。
・田宮先生のお話で、高学年以上の吃音をもつ子どものこの先起こりえる変化のお話しが聞けて参考になりました。本人の様子を見て取り入れていきたいと思います。思春期のエピソードも聞きたいと思いました。
・年下のお子さんたちのお話は、自分たちが通ってきた道だなと思います。応援したい。
・通級に楽しく通っている子どもを見ていると、よかったと思います。グループ内で場に慣れない子が話し出すのを暖かくみんなで待ったりフォローしたりする様子を見ていると、吃音という枠を超えて大切なことを経験させてもらっていると感じる。(通級に通うか通わないかは、それぞれの考えで、正解はないと思います)
・小学校に上がる時の漠然とした不安がありましたが、問題を抱えつつも絶望的ではなく、軽減させる環境調整もできるんだと知り、明るい気持ちになりました。
・同じ悩みの人と交流するってこんなに気持ちが晴れるんだなと思いました。環境調整で子どもが安心すると知り、少し気持ちが楽になりました。特に、学校の先生にどうやって協力を得たらよいのか悩んでいたので、大変勉強になりました。
・年齢によって悩みが違ってくるということを強く感じました。学年が上がると環境も変わってくるので、心配なことも多々ありますが、何かあればすぐに相談してくれるように子どもとコミュニケーションをとっておくことが大切だと思いました。
・子どもに、「(吃音の調子)大丈夫?」と聞いて、「だいじょうぶ。」と答えた時、もっと詳しく大丈夫の中身を聞き出すことが大事だと言うのはとても参考になりました。これからも子どもが過ごしやすいようにサポートしていきたいと思います。
★子ども
・吃音は悪い事じゃないと言われて、嬉しい気持になりました。ゲームも楽しかった。
・通級楽しそう。行きたい。
・自己紹介は恥ずかしくてできなかったけど、クイズやお絵描きは楽しかった。周りに吃音のある子がいないので、こういう機会があると嬉しい。(田宮先生のお話を頷きながら聞いていました。母談)
文責 安田香実