第10回 「吃音のつどい」を開催しました!
「高学年のつどい」 *今回は、高学年の親子を対象に実施しました。
令和5年12月28日(木)10:00~12:00
*内容*
卓球大会
当事者(子どもたち)の交流会
保護者の交流会
第9回の吃音のつどいで、高学年のお子さんの保護者から、「そろそろ、当事者の子どもたちを主体としたつどいを開いて欲しい。」というご要望が出ていたので、その後高学年の保護者の方と、どんな会にしたらよいか“作戦会議”を行いました。加えて、市内の小学校の言語通級で吃音の児童を指導されている先生方にもご協力頂き、昨年末、初めて、子どもが主体のつどいを開催することができました。
作戦会議の中で、保護者の方から、自分たちの子どもより少し大きい子の話を聞きたいというご意見がありましたので、どんぐりでの相談暦のない、高校生当事者の親子さんをお招きしてお話を聞くことになりました。初めての試みで、上手くいくのか直前まで心配でしたが、案ずることなく、今回もとても充実したつどいになりました。皆さまのご協力に心より感謝いたします。
小さいお子様をお持ちの保護者の皆さまにはお声かけしませんでしたが、紙面にてその様子をお知らせしたいと思います。
まとめに時間がかかり、遅くなってしまったことと、今年度2回目となる通常の「吃音のつどい」が年内に開催できませんでしたことを重ねてお詫び申し上げます。来年度も、引き続き「吃音のつどい」を開催していく予定ですので、皆様のご参加お待ちしています。
1.子どもたちの交流会
参加者:高1(ゲスト)、小6、小5(3人)、小4
進行:安田・横枕先生(蘇原第一小通級担任)
①ダブルス卓球大会:アリーナでウォーミングアップ。スポーツをやっている子が多いだけあって、ラリーがすごく続き、白熱したゲームとなりました。
②「すごくすごろく」(吃音の子ども向けに作られた教材)※蘇原第一小学校から借用
・すごろくをしながらおしゃべりして、雰囲気を温めました。
・『カードを引く』というところにコマが止った人は、質問カードを引き、それにみんなで答えていくゲームです。カードには、「好きな教科はなに?」とか、「ケーキ、アイスクリーム、おせんべい、今食べたいのはどれ?」といった軽い質問から、「やわらかい声で『おはよう』と言ってください」(吃音が出にくい話し方)や、吃音に関する質問までいろいろな質問が書かれています。普段から親しくしているというメンバーではなかったのですが、時間がたつにつれてみんなだんだんリラックスして自然に話す様子が印象的でした。
*すごろくの質問で印象に残った子どもたちの回答を抜粋して紹介します。
Q.「吃音が出るとき、体のどこに力がはいりますか?」
→「緊張しない」「心臓」「肺」
Q.「人に言われたらとてもうれしくなることばは?」
→「ありがとう」「大丈夫」「好きです!」
Q.「困ったとき誰に相談しますか?」
→「家族」「親」「相談できない。するのが怖い。」
Q.「『どうしてそんな話し方をするの?』と友達に聞かれたら何と答えますか?」
→「生まれつきそうなってるから」「頭が真っ白になった」「小さいころなら『知らん』と答えた」「噛んじゃった」「でも、この前それ言ったら、『噛みすぎじゃね?』って言われた」
Q.「小さい子があなたの話し方を聞いて笑ったらどうしますか?」
→「無視!」「小学生の頃は切れてた。」
Q.「話しやすいのは誰ですか?」
→「家族」「友達」「鉄友(鉄道好きの友達)」
Q.「ことばを言い換えることがありますか?」
→「ない」「あります」例えば…、「サ行が言いにくいので、発表するときは事前に文を書いて他のことばに言い換える準備をする」「4・7・9が言いにくいので、いつでも『よん・なな・きゅう』と言うようにしている」「前は、とっさに言い換えたりしていたことがあるけど、今はないかな」「同じ意味のことばを考えて言い換えるように意識している」「事前に読むとか言うことがわかっていれば、準備する」「ことばが一番の敵だ!」
Q.「どもるのを治す薬があったら飲んでみたいですか?」
→「飲みたいです」「別に」「飲みたいけど成分が気になる」「厳密にいうと危ない薬じゃないの?」「飲みたいと思う気持ちはあるけど飲まないと思う」
Q.「どもった時どんな気持ちになりますか」
→「ヤバイ、終わったなと思う。自分で自分を責めちゃう。」「蟻地獄」「イラつく」「じれったいなあ、早くしろと自分に対して思う。」「結構目立つ感じだったら嫌な気持ちになるけど、ちょっとだったら何とも思わない。」
Q.「吃音について知りたいことがありますか?」
→「医学的になんで(吃音に)なるのか知りたい。どういう仕組みになっているのか。」「吃音のない人と体の仕組みがどう違うのか。」「知ってみたいけど、知ってどうするんだって話になる。」「治せるかってことだよね。」
Q.「答えがわかっているのにそれを言うと詰まりそうなときあなたは手を挙げますか?」
→「挙げる!」(複数名即答)「成績のために手を挙げまーす!」「挙げない」「ちょっとだけ手を挙げる」「教科による」
Q.「朝昼夜のいつが話しやすいですか?」
→「夜」「ぼくも夜かな」「逆だな、夜が一番詰まる」「別に関係ない」「昼が話しやすい」「朝」
*大盛り上がりで終了。ちなみに一番盛り上がった質問は、「好きな給食のメニュー」でした。
・(あったまったところで…)先輩に何でも聞いてみようコーナー
・自分の学校のクラス数などを紹介して規模について情報交換したところで、今回のゲストの先輩に口火を切ってもらいました。
安田:初めに、小学校の時の事を先輩に話してもらいたいと思います。
先輩:小4の頃、二分の一成人式があって、自分が将来どういう職業に就きたいかということを話す機会があったが、自分はその時吃音があってうまくしゃべれないから、社会人として働いたときに吃音があったらダメな人間じゃないかと自分で自分を責めていた。自分の中でつらい時期だった。そんな中で、通級の森先生に、「うまく話すことよりも伝わることが大切だ。」ということを教えてもらった。それまで、自分はうまくしゃべろうとしていたが、先生のことばで考えが変わり、気持ちが楽になり学校が楽しいと思えるようになった。毎年学年が上がるにつれて、人前でしゃべる回数が増えていくので辛いと思うこともあったが、小6は自分の中では楽しかった。学校での活動が中心になり、自分がやりたいことをみんなと一緒にできることが楽しかった。
安田:中学校で生徒会長されていたと聞きましたが、小学校の時も何かされていましたか?
先輩:小学校の時は、やってみたい気持ちはあったが、怖くて自分ができるはずがないと思っていた。中学校では、班長をやっていてその後、クラス長(学級委員)をやっていた。クラス長は朝や終わりの会で、その日の目標を言ったりする仕事があり、それがきつかった。ただ、それまでは人前でしゃべるのが怖いと思っていたが、中学の先生からの助言もあり、吃音は自分の一部であって、自分の全てではないから、そういう特徴があるけれどほかにいいところもあると自分に言い聞かせ、ちょっと気持ちが楽になった。
Q.小学校で吃音で詰まる時、ストレスをどう解消していましたか?
先輩:ストレスはたまっていたが、解消する方法がわからなくて、ちょっと荒れていた。小3~4頃は、授業中教室を抜け出してボール遊びをしたりしていた。担任とはよい関係ではなかった。家族が心配してくれたが、自分は家族に迷惑をかけたくないと思い、親のサポートを振り払っていた。
※先輩の母からの付け足し発言あり:この学年は、その時期クラス全体が学級崩壊状態で、皆が担任の言うことを聞かなくなっていたので、うちの子は吃音が理由で荒れていたが、それが目立たない(ありがたい?)状況だったんです。
安田:ストレスの原因は何だったんだろうね。うまく話せないことだけだったんだろうか。クラスの友達は吃音の事を知っていたの?皆の理解が理由だということもあったかも。
先輩:クラスの友達に吃音の話はきちんとしていなかったが、暗黙の了解でわかってくれていたと思う。
Q.:今話している様子では、(先輩は)全然どもっていないので、歳があがってくるとどもるのは減ってきますか?
先輩:歳が上がっても、あんまり変わらないと思う。自分が吃らない方法を少しずつ身につけていくからかな。自分は、話始めるときに息を吐きながら、吐いている途中で話始めると出やすいことが分かった。歳が上がっていく中で、自分に合った方法を、自分で理解していくことができるようになってくるから、対策ができるようになるので話し方は上手になってくると思う。だからあまり心配しなくてもいいよ。
Q.:3~4年の吃音の症状がピークの時は、どうやって吃音に対処していたのですか?
先輩:自分でリズムを作っていたかな。しゃべりにくい時、(吃音が)出る出ないのタイミングがあるので、自分の足を軽くたたいてリズムをとりながら話していたかな。自分は前よりもしゃべれるようになって嬉しかったけれど、周りの子は、僕が足を叩いたりしているのを見て、「あいつなんかやってるな」と逆に心配されたことがあった。自分に合う方法を見つけていくことは重要になる。
安田:みんな何かやっていることある?それとも、そのままでよし?
→「オレは、そのままでいいかな。」「ピークの時はオレも足を叩いているな。」
Q.:友達に吃音の事でいじられたりしたことはありましたか?
先輩:あったと言えばあったかな。先生がいるところではしないけど、先生のいないところで悪い子になるずるがしこい子がいて、授業と授業の間の時間になんかいじられたり言われたりすることがあった。しかし、先生に話してもあまり取り合ってもらえず、理解してくれなかった。
安田:そういう時は誰に相談していたんですか?
先輩:お母さんとお姉ちゃんの二人にしか話していなかった。学校での対応は難しくてつらかった。
わかってくれる友達もいて少しは楽になった。相談することは、恥ずかしいとか勇気がいることだと思うけれど、話すと楽になるので、話せる人を作っておくことが大切だと思います。そんな人をみんなも作ってください。そして、自分を責めないように。
話題変わって…
先輩:中学校になると、係活動などもあり、みんなの前で長く話す機会が増えるけれど、先生や周りの子はよく理解してくれてサポートしてくれたので大丈夫だよ。
安田:吃音の事を学校でカミングアウトしたのですか?
先輩:自分で伝えるのは恥ずかしかったので、先生から話してもらった。自分のいいところと吃音の事を含めながらうまく話してくれた。
→「ぼくはこれまでずっと話しやすい先生だったからよかったけど、先生がわかってくれなかったら大変だっただろうな。」
先輩:自分のテンションを明るくして、軽く「自分は話すのがちょっと苦手なんで。」と言えるといいと思う。暗い感じ、深刻な感じにならないように。
→「それ結構むずいな~。でも、印象がちがうね。」
先輩:吃音の事をクラスでどのくらいの子が知っているかな。結構知っているんじゃないかな。
→「ぼくは、3年生ぐらいから、皆に言うのをやめたから、ほとんどの子が知らないと思う。」
→「学年が上がって5・6年になると、もう暗黙の了解って感じになっていて、何にも言われなくなる。」
先輩:みんなにはどんどん新しいことにチャレンジしてほしい。チャレンジは難しいかもしれないけれどやった経験は生きる。とりあえず何かやってみると自分にいいことが返ってくる。それは勉強でもスポーツでも学校生活の何かでもいいと思う。だからみんな新しいことに是非チャレンジしてみてほしいです。
※この後、「吃音クイズ」にみんなで挑戦しました。吃音についての知識もそろそろつけていきたいですね。(「吃音クイズ」はネットで検索してみてください)
2.高学年の保護者の交流会
司会 森先生(那加第三小) 特別参加 廣瀬先生(蘇原第一小)
参加者 保護者6名(父2名、母4名) ゲスト:吃音当事者の高校生Kさん親子
・小5母 年中の時からどんぐりで相談している。吃音の症状はいろいろ繰り返し出ていたが、一番酷かったのは年長と1年生ぐらいで、今は連発を繰り返しつつ落ち着いている。学校ではそれなりに受け入れてやっているが、高学年になるとこれまでとは違う気持ちがあるようなので、今回のようなつどいをしてもらって本当にありがたい。
・小5母 年長の時からどんぐりで相談している。小1~通級利用している。小さい頃から伸発が目立つが、今の環境としては周りの人が皆その話し方に慣れている状態で、吃音は出るものの、気にならない状況。最近の本人は、吃音は治ったと思っていて、今日も、本人はOBのつもりで参加すると言っている。環境のおかげで落ち着いていると思っており、今後また、環境の変化でどうなるのか、親として不安もあり先輩の話を聞かせて頂きたいと思う。
・小4母 下の子が生まれた頃から、吃音の症状が出て、どんぐりに相談している。ずっと吃音は出ているが、本人は全然悩んでいない様子で、本心なのかわからないが、「困ってることは無い。」と言う。今日も参加を勧めたがサッカーに行ってしまった。先輩に何か聞きたいことはないか聞いてみると、「これからどういう事で困ることがあるのか聞きたい。」という事だったので、私自身も同じく勉強させていただきたい。
・小4母 年中の時から吃音が出始めて、年長からどんぐりに相談している。学校ではクラスのみんなに吃音があることをカミングアウトして、日直など一人でいうのは嫌なときは一緒に言ってもらうなどの配慮をしてもらってきているので、それほど困っていることは無いが、今後中学生になった時どのように親としてサポートしていけばよいか心配なので、今日は勉強させていただきたい。
・小5父 学校ではほとんど吃音は出ていないが、家では出るので、リラックスすると出る。学校では何とか自分で出さないようにしているようだ。私自身も吃音だった。小学校の頃は国語の発表など嫌だった。中学校になると(吃音の事を)だいぶ気にするようになり、内向的になっていた部分があるので、子どもが今後どうなっていくのか気になっている。
・小6父 年中から発吃。どんぐりでの相談暦なし。小1の頃が一番酷かったので、その年の秋から通級利用。小3ぐらいから学校での吃音は落ち着いているが、情緒面で不安定になり、現在も通級でお世話になっている。吃音の事を本人はほとんど気にしていないが、毎年年末年始に症状が出るのに、今年はほとんど気にならないので、成長したのかなあと驚いている。彼にとっては、ことばの支援というより、通級で安心して話を聞いてもらえることの安心感が良い状態を保っていると思えるので、このまま卒業まで通級に通うつもり。
・ゲスト母 ことばが遅く幼稚園に上がる頃に吃音の症状が出るようになったが、特に触れずに本児の言うことを聞くようにしてきた。園で友達から指摘されることもあったが、父の、「家族は一番の味方だから!」を合言葉に過ごしてきた。小1から通級利用。しかし、家族に対しては「ぼく、吃音じゃない。どもってない。」と、どもりながら(連発)否定していた。それに対して家族は否定することもなく話を聞いていた。田中角栄とか作家とかアナウンサーとか有名人にも吃音の人が居るので、そういう文献を読んだりしながらも、家族としては気にしないようにずっと接してきた。しかし、たまたま読んだ情報の中で、吃音のある子どもは、喋りたい仕事に就きたいと思っても断念する選択肢になりやすいとか書いてあったり、息子もその頃だいぶ落ち着いていたが、いつまた出るか、酷くなっていくかわからないと思うと、どういう風にしていくといいかというのを何となく思いながら過ごしていた。そんな中で、小2のある時、「ぼく、怖いんだ。大人になったらお父さんのように働こうと思うけれど、どもっているから働きたいと思っても働けなかったらどうしよう。」と急に言い出した。こんな風に不安に思っていたのかと思うと凄くショックだった。そんな時、通級で、ゆっくり音読しているのを見ていて、本人はもっと早く読めたらいいのに、こんなにゆっくりで皆を待たせることになるのを本人は嫌な事だと思っていないだろうかと思っていたら、先生が、「ゆっくり読んでくれるから、すごく聞き取り易い。気持ちがすごく伝わるね。」と言って下さったことで、スラスラ読めることが大切なだけでなく、わかりやすく読んで思いが伝わることが大切だということを教えていただき、息子は音読や発表することを頑張ろうと思えるようになった。それがきっかけで積極的になり、学級委員になるなどチャレンジするようになった。中1までそんな感じが続いたが、チャレンジすればするほど、自分のできなさや周りの反応に傷ついたりすることも増えた。親としては、気にしないようにしていたが、特に母親は本人のちょっとした気持ちの揺らぎを感じ取ってしまい、一喜一憂しがちだった。自分はいつも、夫にあまり聞かないで自分の考えでやって事後報告していたが、ある時、子育ての何かの会で、夫に聞いてみたり、一度言われるようにやってみたりするのもいいのでは?ということを聞き、改めて夫に子育てをどう感じているのかを聞いてみたところ、自分とは違う見方をしていてアドバイスもあった。夫とは、そうこうするうちに吃音のことをそれまでよりよく話すようになり、子どもとも吃音の話をするようになった。子どもは、親に心配かけないようにあまり吃音の話をしないでいたようだが、高学年になってからは、折に触れて、「お父さんとお母さんは、あなたが一人で悩んでいることが一番つらいんだよ。親が心配するから言わないようにしていることがあるかもしれないが、先生でも誰でもいいから話してほしい。」と伝え、「どもる君へ」という本を渡し、最後のページの言友会の連絡先も伝えた。クラス替えや長期休みの後は吃音が出やすいようなので、さらっと吃音の調子を聞くようにしてきた。
吃音だからというより、一人の子どもだからという気持ちで接するようにしているつもり。
Q.クラスの友達にカミングアウトしていないのですか?
・高校1年生の担任の先生には三者面談で伝えてあるし、中学からの申し送りもあったようで、気にかけておきますというぐらい。基本的には親の考えというより、その時本人がどうしてほしいかを優先している。親しい友だちには、自分はこういう話し方の癖があるんだというような伝え方で話している様子。
・今年の夏、「どもる君へ」を書いた、大阪の吃音の当事者伊藤さんたちが主催している「大阪吃の会」が名古屋で開催され、成人当事者のフリートークを見せていただいた。吃音の症状の波もすごくありつつも、自分の仕事の話やその時の気持ちなど、お互い話をすることで、また、話せる仲間がいるということで、吃音のある自分を受け入れていけるとか、吹っ切れると語っておられた。私自身も年を重ねてできないことが増えてきたが受け入れるようになった。子どもたちには未来が広がっているが、どこかで受け入れていく時がくるなぁと思いながら皆さんのお話聞きました。
・森先生 自分は指導者だが当事者ではなく、通級の担任になって初めて吃音の事を学んだ。通級を始めた頃はわかっていなくて申し訳ないことを言ったかもしれない。岐阜大学の村瀬先生のところなどで研修を受けたが、初めにKさんと出会って、Kさんから学ばせてもらった。何が正解というのはないし、こうやって皆さんの話を聞くのが一番の勉強だと感じる。
・家族はどんな時も味方だというスタンスは、生涯も大切だと思う。吃音は本人にとって足かせになるということに頭が行きがちだが、逆にそういうことがなかったら、親族が結束して本人と向かい合うことはなかったかもしれず、吃音があることをプラスに動いておられるのを自分も参考にさせていただきたいと思う。本人の中で波があること、チャレンジすることで壁にぶつかるなど、そういう状況にどう向かっていったらよいのか不安でもあったが、寄り添いすぎず、支えたいと感じた。そっと本を置いておくなどしてみたい。
→ゲスト母 本は、親が読みたくて買ったが、よかったら読んでみて、ぐらいの伝え方で、家族共有の本棚に置いておき、読んだかどうかなどは確認しないようにした。心配だとつい子どもに言いたくなるが、波がある時に、親が何か教えてみても、あまりよかった記憶がなく、親としてすっきりしただけのような気がする。それより、自分がどう向き合うかということが大切だと思う。夫や4つ上の姉や相談できる人などに本人の状況を話して聞いてもらうことで、自分の考え方を変えて、精神状態を良くすることが、子どもを何とかしようとするよりも良い結果になっているような気がする。(子どもに聞いたことはないが)夫に自分の気持ちを伝え、よく話を聞いてもらっていた。それができるようになる前は、がみがみ怒っていた。吃音だからということでもなく、よく叱っていた。
Q.高校の面接のときはどうされましたか?
→面接がない高校だった。夫が大学の教員で、入学の面接をすることがあり、吃音やいろんな障害の学生を面接することもあるようだが、話し方よりやる気や話の内容を重視するとのこと。そんな時、通級の先生が教えてくださった、「詰まることより伝えたい思いがあって一生懸命話してくれることの方が大切だ。」ということを思い出す。夫も、話し方で落とすような学校や会社なら魅力がないから行かなくていいという考え方。
・しかし、実際理解のある学校や職場ばかりではないと思うので、もし、吃音が出ることで落とされることが続いたら親としては心配。
→そうなると不安だが、一番つらいのは本人。そんな時こそ親は味方になる。不安なのはわかるよ。と伝える。夫は、先のように、そんな理解のない人たちとは付き合わないでいいと言う。わかってくれる人を見つけてそういうところに行けばいいと言う。
・市立中学の教員をしています 面接は学校なのでよほど心配はない。大体、クラスに2名ぐらい吃音の子がいる。保護者面談をしていて話されることがあるが、家庭の姿と学校の姿が違うのかもしれない。知らず知らずのうちに子どもが育っていて、学校で成長している。吃音で落ちるような学校には行く必要がない。職業によって誰しもなりたくてもなれないものはある。高校生になると適応して吃音が気にならないことが多いし、周りも大人になって茶化すことは減る傾向がある。
・ゲスト母 中学の時、パワポで説明する授業があったが、パワポを見ながら話すと話しやすかったらしい。皆がパワポを見ているので、自分に注目されず緊張感がなくなり話しやすかったようだ。
・吃音は大人になると自分なりの方法を見つけて良くなると言われるが、個人差はある。
・うちの子は、人前で話したい気持ちが強いので、挑戦することを後押ししてやりたいが、どこまでしていいのかと悩む。家でいつもテレビを見ながら、「なんでうまくしゃべれんのや。もっとしゃべりたいのに。」と言っている。サッカー選手になりたいという夢があるが、「ヒーローインタビュー無理やなあ。」とぼやいていて、心配が先に立っている。最近、(親が)応援しても、失敗しながら強くなることに憤りを持っている。
・ゲスト母 親にそういうことが吐けることが大事だと思う。「そうだよね。」と受け止める。
・色弱と吃音とくせ毛など、個性としていろいろありすぎて、「なんで俺ばっかり、こんなふうなんや!」とぼやいている。今後吃音があることで制限がかかってくることがあると思うが、将来の夢はいつぐらいから考えて、親はそのためのレールを引いてやるとか見守るとかしたらよいか?
→森先生 普通に考えたらできなそうだという職業もあるが、いろいろあるよと伝えたい。一番なりにくそうなアナウンサーにだって吃音の人はいるし、希望はいろいろ持つことが大事だと思っている。いろいろな職業の人がいることを知ること、その職業で何をしたいと思うのかが大切。苦手さを出したくないからあきらめるということもあるかもしれないが、よく親と相談しながら決めていけばよいのではないか。
Q.夫に相談して分かち合う話を聞いたが、向かう方向は同じなのか?
→ゲスト母 それぞれ考え方は違うので、まとまることはなかった。それまでは、話し合ったりしないで自分の考えだけでやってきたところがあったが、夫の考えを聞くようになって、自分の考えにないことをやってみるようになった。すると、息子というより夫の方が何か変わってきた。母親任せだったところがよく考えて発言してくれるようになった。違う時はどうしてそういう考えなのかを聞くようにしていたら、言い争うことも減り、両親が仲良くしている関係になった。そうすると、親に心配かけないようにしていた子どもも、話してくれるようになった。
・家で吃音がすごく出るが、取り立てて話題にすることもなく、普通に接している。自身も吃音があったが、母が「吃音は個性として受け止めなさい」というスタンスだったことが印象に残っている。自分で吃音が出ない方法を習得するようになり、現在はほとんど出ないようになった。吃音でもいいじゃんぐらいの感じで接している。息子が吃音が出ない方法を聞いていたので、そういうことを話題にしてみようと思う。
・息子は社交的ではないと思っていたが子どもたちの交流会を見て、最初に質問の手を挙げたのが衝撃だった。今回も普段交流がない人の中に入るので誘っても行かないと言うかと思ったら、行くといい、それにも驚いた。そして、初対面の子たちと打ち解けているのにびっくり。成長を感じた。参加してよかった。躾はしないといけないが、自我も育っており、やりたいことを見つけてさせたいと思う。私自身は、高校の教員をしているが、将来のことを考えていない子があまりにも多い。仮に、吃音があってもアナウンサーになりたいと思ったとしたら、アドバンテージ大きい。吃音なのになろうとするのか、吃音があるからなりたいことを下げて別の道に行くのかは本人に任せればいいと思った。大人がレールを敷かないでも、自分で考えて生きていくのだろうと思える。
・学校を卒業してからアルバイトが社会に出るスタートだと思うが、社会に出たときに、学校と違うと感じられたことがあれば聞きたい。
・(私自身の吃音は)高校で症状が収まってきて、大学の時はあまり出なくなったので意識が薄れていたので、就職の時も吃音の悩みはなかった。
・森先生 通級の制度があり、利用する子もしない子も、しばらく休むのもそれぞれだと思うが、相談できる相手がどこかにいることが大切だと思うので、通級の利用の有無にかかわらず、その都度、相談できるところがあるとよい。通級は相談しやすい場所にはなると思う。
・ゲスト母 子どもが素直に話せる雰囲気を作ってくださったので、通級を利用するのはありがたかった。
・廣瀬 こんな年になってもKさんのようなことは言えないと思った。生の声を聴かせてもらえることがうれしい。応援団を増やそうね!そのスタンスで是非やっていけたらと思う。自分は人前で話すことがめちゃくちゃ苦手だったが、今はそうではなくなった。これは慣れです。
3.アンケートより
・先輩のいいお話が聞けて胸がいっぱいになりました。ゲストのKさんもすごく優しい雰囲気でゆっくり丁寧に子どもたちに話ししてくれていたのも印象的でした。子どもたちが、自分たちが主体となって質問したり話を聞いたりして吃音と向き合っている姿を見て成長を感じました。
・これまでは母が参加して夫に報告するばかりでしたが、今回、夫が子供を連れて参加してくれたことで、 我が家の子どもの吃音に対する認識を再確認することができました。吃音にこだわらず、広い視野で成長を見守りたいです。
・「夢があるのはアドバンテージが高いよ!」というお話に共感しました。子どもたちの「好き」という気持ちに、これからも耳を傾けてあげたいです。
・こどもは、年齢が上がるにつれ、自分で上手に吃音と付き合っている気がします。言い換えなどでうまく立ち回っているようです。今までのように、全部サポートせず、子どもにどうしてほしいか確認することが大事だとわかりました。思春期が来るとまた悩みも色々増えるかと思いますが、親や担任の先生、信頼する友達などに困りごとを相談できるような環境を整えてあげることが大切なので、見守りつつサポートできることはしていこうと思います。
・受験の面接で、吃音でうまく話せなかったら落されることが心配という話で、「それで落とすような学校や企業なら入らなくていい」というご意見を聞き、すごく心を打たれ納得しました。一生懸命話して伝えることが大切だという話しがありましたが、それは面接の時だけでなく、普段の生活から大切にしていきたいと思いました。
・先輩の親子さんと交流して一番印象に残っているのは、親が常に「いつでもあなたの見方だからね」という姿勢を見せておられたところです。お子さんも、家族を信頼して相談されており、家族の絆の強さを感じました。
・こどもたち同士が会話をしたり先輩に質問したりする姿を見て、心打たれるものがありました。普段我が子以外に吃音を耳にする機会があまりないので、吃音が出ている子どもたちを見て失礼ながら安心感を抱いたのが本音です。
・通級の先生に参加していただけたので、今後、進学を見据えた先生方のお話が聞けるといいと思いました。
・「うまくしゃべれなくてもいい、伝わるようにゆっくり話すことや、話す中身が大事だって言っていたね。」と言うと、大きく頷いていました。
・高校生の先輩が上手に話していたけれど、直るわけじゃないのか、と少し残念そうでした。でも、こうやると言いやすいなどと教えてもらえた。行ってよかったとのことでした。
・先輩の話は、「人生そのもの」で、吃音の有無に関係なく、生きていく上で必要なことだと感じたと話してくれました。
・友達が話しかけてくれて、サッカーやドッジボールの話ができたし、卓球もまあまあ楽しかった。先輩に質問 したらこんな答えが返ったと親に報告してくれました。
文責 福祉の里どんぐり
安田香実